lovely honey

   「あ……」
 覆い被さったユーリが動く度に、ベッドが軋んだ音を立てる。
「ちょっ……と……待……」
「待てない」
 奥まった場所にユーリの指を深々と呑み込み、フレンは目尻に涙を浮かばせながら身体をよじった。
「そ……んな……動かす……なっ」
「動かさないでどうすんだよ。入れっぱなしでいいのか?」
 くすりと笑いながら、ユーリはフレンの頬にくちづける。
「君は……乱暴すぎ……」
「どこが? 優しくしてやってるだろ? お前が堅くなりすぎなんだよ」
 そう言うと、尚更内部に埋め込んだ指を激しく出し入れする。
「やっ……ああっ……」
 のけぞりながらもなんとかユーリの身体を押しのけようとするが、そのたびに内壁を引っかかれて身体から力が抜けてしまう。
「我慢するなよ、イってもいいんだぜ?」
「こんなっ……、隣にみんないる……のにっ……」
「そう、もうすぐカロルを連れたおっさんもお前の部下のリンゴ頭も帰ってくるかもしれないよな?」
 意地悪く囁いてくるユーリの言葉に、思わずフレンは瞳をあけ、縋るように見上げてくる。
 村の宿はどこも空きがなく困っていたユーリたちに、たまたま宿に滞在していたフレンが同室を申し出たのだ。
 いつものことながら、レイヴンはカロルを伴ってどこかに消え、ウィチルは女性陣たちと隣の部屋でまだ談笑をしているはずだ。
「だからさ、大人しくしてろって。早くすまさないと、戻ってきたおっさんやリンゴ頭たちに見られちまうぜ?アダルトな18禁はおまかせなおっさんはともかく、おこちゃまたちに見られるのだけは勘弁だからな」
「君が勝手に……」
 文句はユーリの唇に奪われ、フレンは再び蠢く指先がもたらす快感をじっと耐えるしかなかった。
「あ……、もうっ……」
「そろそろいいか?」
 好き勝手に蹂躙していた指が引き出され、フレンは腰をユーリに抱えられた。
「待っ……ユーリ」
「これ以上待ってどうすんだよ。挿れるぞ」
「あっ……」
 容赦なくそこに堅いものが押しつけられ、ゆっくりと埋め込まれる。
 堅く閉じている蕾が無理矢理広げられ、酷い圧迫感と痛みとともに、熱い塊が押しはいってくる。
「あ……ああっ……あああ」
「力抜けって」
「む……りっ……」
「ったく。いつまでたっても慣れねえな」
「そっちが下手……なんだっ」
「言ってくれるねえ」
「ああああっ……」
 一気に奥までねじ込まれ、その衝撃にフレンの白い喉がのけぞる。
 ゆっくりと、そして徐々に激しく貫かれ、フレンの唇から漏れる吐息が悲鳴に変わっていく。
「ユーリっ……痛いっ……もっとゆっくり」
「フレンはっ……文句が多いな」
「だからっ……あっ……ああっ……」
「だったら、キスさせろ」
「ん……」
 降りてくるユーリの唇を素直に受け入れ、フレンは裸の背中を抱き寄せた。
「そのまましがみついてろよ」
「あ……やっ……」
 大きく足を広げられ、抱え込まれてフレンは再び深く貫かれた。
 抵抗する暇もなく、激しく揺さぶられて、無理矢理高みへと連れて行かれ、そして深く白い闇へと落とされた。



 ふと目が覚めると、フレンはユーリに抱き寄せられていた。
「あ……」
「まだ夜だ。ついでに誰も帰ってきてねえ。ちょっとの間気を失ってたんだよ」
「そうか……」
 ほっとため息をついた次の瞬間、フレンは思わずユーリの腕から身体を起こした。
「着替えないと。それとベッドを……」
「ここでいいじゃねえか」
 そう言われて、腕を引っ張られ、フレンは再びユーリの腕の中に捕らわれた。
「何?」
「どうせベッドは4つしかねーんだぞ。俺とお前が仲良く同衾でめでたしめでたしだろ? 誰も変に思ったりしねーって」
「そりゃそうかもしれないけど」
「いいから寝てろ。シーツかぶってりゃわかんないだろ」
「ったく、君という奴は!」
 呆れながらも半ば諦め、フレンはため息をついて瞳を閉じた。
「そうそう。それでいいんだ」
 偉そうな物言いに、むっとはしたが、続いて触れてきたユーリの唇の優しさに怒りは霧散した。
 何度も唇を触れあわせているうちに、フレンはいつの間にか眠りに落ちてしまっていた。




「そろそろぼく、隣の部屋に帰りますね」
 ウィチルが立ち上がり、会釈をする。
「明日どんな感じだったか知らせてね」
 ジュディスが妖艶に微笑み、片目をつむってみせる。
「どんな感じと言いますと?」
「ユーリとフレンよ。今頃抱き合って眠ってるんじゃなくて?」
「な!」
 その言葉に、ソディアが思わず腰掛けていたベッドから勢いよく立ち上がる。
「あらあら、邪魔しちゃだめよ。レディがこんな深夜に殿方の部屋に行くのも感心しないわ」
「だ……だが!」
「でもお隣の部屋はベッドは4つしかないんですよ。誰かが一緒に寝るしかないなら、お友達である二人が一つベッドを分けるのは自然なことじゃないです?」
「そうそう、男同士が一緒のベッドに寝てたってどーってことないじゃない」
 エステルとリタの言葉に、ソディアは唇をかみしめる。
 完璧に納得していない表情だ。
「隊長をユーリにとられちゃって寂しいなら、私と一緒に寝る?ここもベッドは3つしかないし」
 腰をくねらせながら、ジュディスがソディアにしなだれかかる。
「なっ……」
「心配しなさんな。私とエステルが一緒のベッドに寝るわよ。あんたたち二人じゃ窮屈でしょ。それにジュディスと一緒だと襲われちゃいそうだもんねえ」
 ニヤリと笑いながら、リタが言う。
「あーら、失礼しちゃう。でも確かにこんな可愛い子だったら食べちゃってもいいかも」
 ジュディスに顎をつかまれ、ソディアは思わずその手を払いのけると部屋の隅まで逃げ、縋るように壁にへばりついた。
「あんまり彼女で遊ばないでくださいね。では」
 その様子に半ばため息をつきながら、ウィチルは部屋を後にした。
 隣の部屋へ入ると、女性陣の予想通り、ユーリとフレンは同じベッドで眠っていた。
 あの几帳面な隊長が、裸の肩をあらわにし、しかもユーリ・ローウェルに抱き寄せられている格好は、確かに同僚には見せたくない姿だった。
 しかも、彼の首筋や鎖骨に浮かび上がっている鬱血は、俗に言うキスマークというものではないだろうか。 
 知識では知っていたが見るのは初めてだ。
 まあ鎧を着てしまえば見えない位置ではあるのだが。
「ま、どうでもいいですけどね」
 即座に何も見なかったことにして、ウィチルは自分のベッドに潜り込んだ。
 思えば、早々に姿を消したレイヴンはこのくらいの惨状はお見通しだったのだろう。
 とりあえず、ユーリ・ローウェルが来ているときは、この二人と同室はちょっと遠慮したいと思うウィチルであった。